うたのはじまり

だいじょーぶって、心からこぼれおちた。ある日、息子への子守歌が生まれた。〝ろう〟の写真家が、嫌いだった「うた」と出会うまでの記録。

2020年2月22日(土)より
渋谷シアター・イメージフォーラムにて
ロードショー!
以降、名古屋・名演小劇場、
大阪・シネ・ヌーヴォ、
京都・みなみ会館ほかにて順次公開

最新情報 News

解説 Introduction

だいじょーぶって、
心からこぼれおちた。

ある日、
息子への子守歌が生まれた―。
“ろう”の写真家が、嫌いだった「うた」と出会うまでの記録。

“ろう”の写真家、齋藤陽道。20歳で補聴器を捨てカメラを持ち、「聞く」ことよりも「見る」ことを選んだ。彼にとっての写真は、自分の疑問と向き合う為の表現手段でもある。そんな彼の妻・盛山麻奈美も“ろう”の写真家である。そして彼女との間に息子を授かった。“聴者”だった。
幼少期より対話の難しさや音楽教育への疑問にぶち当たり、「うた」を嫌いになってしまった彼が、自分の口からふとこぼれた子守歌をきっかけに、ある変化が訪れる。生後間もない息子の育児を通して、嫌いだった「うた」と出会うまでを切り取った記録。抱いた赤子に突然泣かれ、ふと子守歌がこぼれる、誰にでもある経験。音は「どんな色をして、どんな形をしているのだろうか?」。無意識に現れた「うた」は一体どこから来たのか。
監督は、古川日出男等による朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動を二年に渡り追ったドキュメンタリー映画『ほんとうのうた』(14)、七尾旅人が戦死自衛官に扮したライブ映像作品『兵士A』(16)等の河合宏樹。

出演 Cast

齋藤陽道 (さいとう・はるみち)

1983年、東京都生まれ。写真家。都立石神井ろう学校卒業。2010年、第33回キャノン写真新世紀優秀賞受賞。2013年、ワタリウム美術館にて大規模個展「宝箱」を開催。2015年、3331ArtsChiyodaで「なにものか」を開催。主な写真集・著作に「感動」「宝箱」「写訳 春と修羅」など。2018年に「声めぐり」「異なり記念日」 を同時刊行。2019年11月30日~2020年1月26日まで開催される東京都写真美術館主催のグループ展「日本の新進作家 vol.16 至近距離の宇宙」に参加。2020年12月写真集「感動、」(赤々舎)を発表。

監督 Director

©齋藤陽道

河合宏樹 (かわい・ひろき)

学生時代より自主映画を制作。震災後はミュージシャン、パフォーマーなど表現者に焦点を当て撮影を続け、記録映像に留まらない「映像作品」をアーカイヴ。時にはドキュメンタリーとして作品化。制作チームでの名義は「Pool Side Nagaya」。ライブ&イベント撮影をメインに映像制作全般で活動する。
2014年、古川日出男、管啓次郎、小島ケイタニ―ラブ、柴田元幸が震災後、被災地を中心に上演した朗読劇「銀河鉄道の夜」の活動を二年に渡り追った初のドキュメンタリー映画『ほんとうのうた』を発表、渋谷ユーロスペースを皮きりに全国各地上映。2016年、七尾旅人が戦死自衛官に扮した初のライブ映像作品『兵士 A』を監督、 BD/DVDでリリース。全国各地で劇場上映。2017年には飴屋法水と山下澄人の初タッグになる作品『コルバトントリ、』の公演を映像化。

劇場公開に寄せて
河合宏樹監督からのメッセージ

赤子をあやす為に彼からぽろっと溢れたうた、その瞬間にすべては語られた。歌が祈りに戻った瞬間。人類が初めて歌った瞬間。
うた、音楽、の本来の役割とは何だったのか。齋藤陽道と共に考えた数年間。誰しもが持つ歌心に対して、または、現在の音楽との接し方について、今一度、その根源を思い出して欲しいと思いこの映画を制作しました。

コメント Comments

  • コムアイ (水曜日のカンパネラ)

    思うより前にこぼれる こえ や
    伝わらなくってもいいよというやさしい うた にあふれている

    美しいのは、水際にこえがうまれる瞬間。
    あなたとわたしがはじめまして、と出くわしたとき、いちばん二人に合ったコミュニケーション方法“こえ”はなにか、数秒の間で見つけ出そうとする。ことばの速度、種類、ジェスチャー、手話、視線など、あなたに興味をそそられたから、わたしはたくさんの“こえ”のなかから最適なものを探し出そうとする。その歩み寄り、共同作業が愛おしい。

  • 藤田貴大 (マームとジプシー主宰/演劇作家)

    ひかりのひとの言葉は、うたとなった。音と声が生まれた瞬間だった。そして目に映ったその光景のことを、はじまりというのだと知った。はじまりはやはり逆光のなかで、ひたすらにうつくしく滲むようだった。

  • 土岐麻子

    私は聴者だから「うた」がどんなものなのか知っている。でも、歌うことを仕事にしている者として、歌うことの本質についてはよく分からなくなる。そのことについて本当によく考えている。
    さて、うたとはなにかと問われた終盤のインタビューで、齋藤さんが少し自信がなさそうにぽつりと答えたとある言葉は、私にとってひとつの真理であると思い当たり、衝撃を受けた。もしかしたら歌うことを仕事にしている人こそ、出会ってよかったと思える映画かもしれない。
    そしてこの映画は、ろうの齋藤さんが歌に近づくドキュメントでありつつ、同じ時代を生きる一人の男性が親の願いや「こうあらねばならない」という苦しみから一歩踏み出し、自分の人生を歩み始める記録でもあると感じた。
    誰かのために用意するものではなくて、自分の心を照らすために歌いたい。
    誰かのために生きるのではなくて、まず自分の心を照らすように生きたい。
    誰かを照らせるとしたらきっとそのあとなのだろう。

  • 管啓次郎 (比較文学者、詩人)

    「ほんとうのうた」を追って、ぼくたちは旅をしていた。そのときぼくが意識することなく前提としていたのは、音の存在だった。では音がなければ「うた」はないのか? そんなことはないよ、としずかに力強く教えてくれるのが、『うたのはじまり』だ。生命が生まれ失われ生まれつながれてゆくあらゆる場面で、うたはいつもはじまっていたのだ。植物も動物も、この地表で生き、ふるえ、伝え合う。「修羅」の道を歩もうとする写真家は、そのうたに反応する。カメラがあっても、なくても。この映画を見終えたら、また夜空を見上げてみよう。広大な宇宙空間に、音はない。でも数々の光が踊るそこは、いつも、はじめから、うたにみたされていたのではないだろうか?

  • マヒトゥ・ザ・ピーポー

    それを外側から説明しようとするとき、言葉はいつも役目を果たせないでいる。
    この映画の中に登場するアーティストや監督ですらいつまでたってたどり着けないのは、実はわたしたちがその中心に立っているからかもしれない。
    うたは存在する。

  • 高木正勝 (音楽家)

    ここには、ほんとうのうたが記録されています。
    いままさに我が子を産んでいるお母さんから聞こえてきたのは、海のように懐かしい命のうたでした。
    お父さんが子守唄をうたっているのを眺めていると、すべての生き物は、うたを持って産まれてきたのではと、そんなことを思い出しました。
    うたは、どこからやって来て、どこに届くのか。そして、何を生み出すのか。

  • 蓮沼執太 (音楽家)

    本能的な眼差し。人間が持つノイズ。河合宏樹は違和感から世界を繋ぎ、均質化を壊していく。

  • 青葉市子

    うたは、だれにでも。
    うたは、生きていることが。

  • 七里圭 (映画監督)

    撮られるものと、撮るものに垣根がないだけでなく、それを見るものまでが、同じ地平にいるような錯覚に陥る不思議な映像記録だと思いました。
    他者の切実さが、こんなにも親しく、優しく、画面のこちら側に溶けだしてくることに、うっとりしたり、恐れおののきながら、切実な現実を見世物にすることについて、改めて考えさせられました。
    その場で現れては消える見世物でなく、イメージとして記録されたもの、記録する行為について。

  • 広瀬奈々子 (映画監督)

    「ろう者の写真家」にカメラを向けているにも関わらず、なぜか写真家としての姿は映らない。映されているのは、徹底して人間・齋藤陽道。聴覚障害や写真家といった括弧付きのものではなく、生きる上で必要不可欠な「人の欲求」そのものを掬い上げようとしている。観終わってもう一度、陽道さんの筆跡から聞こえてくる音に、耳を澄ませたくなった。

  • 柴田元幸 (翻訳家)

    「ダイジョウブ」という言葉が、これほど尊くうたわれたことがあっただろうか。

  • 太田信吾 (映画監督)

    〈耳が聞こえない人〉という、紹介文の一文が目に入り、最初、この映画を見ることが怖かった。僕がいつか、テレビに絶望した日のことを思い出されたから。ある晩、震災で逃げ遅れた聴覚の不自由な方を描いたあるドキュメンタリー番組があって、その中で聴覚の不自由さを伝えるためなのだろう、音をカットする表現がなされていた。あまりにも暴力的な行為ではないか?と思って、その番組を見た晩に僕はテレビをゴミ捨て場に捨てた。耳が聞こえない、という状態が僕にはわからない。想像をしてもわからない。
    あの晩、僕はせめてもとゴミを捨て終えた後で、夜道に立ち尽くし、耳を塞いでみた。ゴォーっという心臓の鼓動が聞こえてきた。〈耳が聞こえない〉を0デシベルで表現して本当に良いのだろうか? わからないことを、わかったフリをして描く表現に触れるのが怖いから、この映画を避けていた。でも、勇気を出して、映画を見た。素晴らしかった。この映画は、うたの鳴る/生(な)る、樹。そう思った。マジックペン、鋏、ほうき、木の葉、シャッター、落ち葉、靴……その樹に揺れ音を奏でるのはそんな楽器たち。河合くん、「うたのはじまり」という映画を作ってくれてありがとう。「うたのはじまり」は〈耳が聞こえない人〉の映画ではなく、〈奏でる人〉たちの映画でした。最高でした。僕も、セカイの音色に敏感でありたいと思いました。

  • 古川日出男 (作家)

    私がここに記しているコメントの文字に触っても、そこから振動は感じられない。けれども、あらゆる「うた」には響きがある。私たちの肉体に鼓動があるように、やっぱり響きがある。それは結局、愛には響きがあるのだ、と言っているような気がする。私は、そうした衝撃的な事実を、この映画『うたのはじまり』に触れて、知った。私という小説家は、この映画に「触った」のだと思う。

  • 後藤正文 (ASIAN KUNG-FU GENERATION)

    音楽が大好きだというあの娘や、ステージ袖でガチガチに固まっているあいつや、歌詞が書けないだなんて悩んでいる彼に見せたい映画でした。もちろん、君にも見てほしいし、むしろ僕こそが見るべき作品だ!と思いました。

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